Shin Yamagata

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9月9日
茶店村上春樹が二人いた。一人は本を読み、もう一人は眉間にシワを寄せ中空を睨んでいた。L字に置かれた7、8人は腰をかけられそうなソファーの短い側に顔をしかめた村上春樹が座り、長い側の真ん中あたりに本を読んでいる村上春樹が座っていた。他に座っている人はいない。読んでいる本は他人の小説で、その小説にはストーリーらしいストーリーはなかった。顔をしかめた村上春樹が考えているのはもちろん小説のことだった。わたしは二人を同時に眺められる位置からコーヒーを飲みながら二人を観察していた。二人は知り合いなのにどうして喋ったりしないのか、目を合わせもしないじゃないかと、コーヒーに口をつけては二人を眺めていた。