Shin Yamagata

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11月9日

窓の外へ目をやると常緑樹が枝をしならせ激しく揺れている。道を挟んだ向こう側の桜の枝から葉が次々と離れ宙を舞っていく。締め切った室内では何も感じなかったが、外では風が吹きはじめていた。おそらく冷たい北風だろう。わたしは椅子に腰掛け、手に持っていた本を開いた。開いた右側のページには木製のテーブルに載った湯気を上げるコーヒーカップの写真が、左側のページには炎を吹き上げるドラム缶の写真が印刷されていた。ドラム缶の背景を一通り見てからページをめくらず顔をあげた。わたしの前に立っている女をわたしは以前どこかで見た気がする。窓からの光でよく見えない表情を読み取ろうと目を細めると