Shin Yamagata

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9月29日
元気な看護師のおばさんが「はいはい」と手慣れた感じで採血の準備をはじめた。腕をここに乗せて、と言うから合皮みたいなビニールに包まれた、フェリーの雑魚寝のところに置いてある枕みたいなものの上に右腕を乗せた。どんな針が刺されるのかは見たくないから顔を左側に向けた。アルコールを染み込ませた綿で肘の内側を何度か撫でられる。「手をグーに握って」と言うから握った。たぶん、針が刺された。まったく痛くなかった。こんなことがあるのかと思いながら顔は左に向けたままにしておいた。血を抜くのにこんなに時間がかかるのか、と思うくらいの時間が経った頃に、「はい、グーを緩めて」と言うから力を抜いた。たぶんこれから針を抜かれる。きっと妙な痛みが腕から全身に駆け抜けるのだろうと覚悟していたのだけど、これもまったく痛くなかった。看護師のおばさんを見た。「まったく痛くなかったんですけど! すごいです!」看護師のおばさんは、「あら、よかったー」と手を休めずに言って、「でもどうして注射を