Shin Yamagata

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10月27日
ひざを叩かれて目を開けた瞬間に、ひざを叩いて起こしてくれたおじさんと目があって、その瞬間に事態を理解して、終点の新宿駅に着いた、おじさんに「あっ、すいません、ありがとうございますっ」と言ったのだけど、起きたといってもほとんど寝てるわけだし、耳にイヤホンをしていたのもあって、声が大きかったらしく、目に入る四割ほどの人が一斉にこちらを振り返って、あ、しまった、声がでかすぎたのか、とは思っているのだけど、まだほとんど寝ているようなものだからそれほど気にもならず、一番振り返って欲しかった、ひざを叩いて起こしてくれたおじさんは、どういうわけか振り返らずにすたすたと他の背中に混ざって電車の扉から出ていき、あーあ、とか思いながらよっこらしょっと、誰もいなくなった車内で立ち上がると、プシューと、もう一方のドアが開いてそこから人の波が一斉にこちらに押し寄せてきて、

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12月31日
昨年の大晦日は何を書いたのだろうと思った(https://blepharisma.hatenablog.com/entry/20171231)。
今年はセクハラどころではない、広河隆一の性暴力疑惑(https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/25/mayumitaniguchi-metoo_a_23627013/)の記事が年末に出た。広河隆一が文春の取材に答えた言葉がまたひどい。まだこれからいろいろ出てくるのかもしれない。「広河隆一さんの性暴力に関する報道を受けて」(http://journalasia.blog22.fc2.com/blog-entry-760.html)という文章を読む。自分がその場にいたらどうしただろうかと思った。アラーキーの件も今年はあった。アラーキーは結局何のコメントも出さなかったのだろうか。そういう話は聞いていないからたぶん出さなかったのだろう。出していたら誰か教えてください。アラーキーは社会的な制裁を受けることなく仕事を続けているということか。それとも社会的な制裁を受けるようなことは何もしていないということなのか。黙っていては何もわからない。アラーキーを擁護するようなことをSNSに書き込んでいた写真家もいた。飯沢耕太郎アラーキーの件に対して書いた文章はもう読む気にもならないけど、ここに貼り付けておく(http://realkyoto.jp/article/izawa-kotaro/)。これが写真評論家の仕事らしい。そんなアラーキーの一件があったあと、その一件に何も触れないまま、アラーキーの写真を表紙に使った老舗カメラ雑誌の編集長のインタビューもあった(https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/04/asahicamera_a_23607860/?utm_hp_ref=jp-arts-culture)。このインタビューを読んで呆れた人も多いだろう。無自覚なまま「男」を振りかざしていないか、男のわたしはもっと想像力を働かさなければならない。アラーキーの一件はこのまま、うやむやなまま終わってしまうのか。除夜の鐘を聞いて、それでおしまいか。いろんなことにけじめがつかないまま時間だけが過ぎて行く。そういうことがこの島国のあちらこちらで起こっている。

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11月11日
この秋は女の人が革ジャンを着ているのをよく見かけるのだけど、流行っているのかどうかはわからないのだけど、今、目の前に三人の女の人が革ジャンを着て座っている。そして次の駅でまた一人、革ジャンを着た女の人が乗り込んできた。だけど流行っているのかどうかはわからないのだけど、だからといってマッドマックスみたいな感じじゃなくて小綺麗に着ていて、革ジャンに傷も汚れもなくてピカピカでテカテカだから、皮ではなくて合皮かビニールかもしれないのだけど、でもやっぱり流行っているのかどうかはわからないのだけど、今、その四人の革ジャンを着た人たちはお互いを見て何を思うのだろうと思ったところで、誰も他人のことなど気にしていなくて、手元のスマートフォンをずっと眺め、一人は指を動かし続けているからゲームか何かをしているのだろうし、もう一人はシュッシュっと動かしているから何を見ているのかしているのかはわからない。

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11月16日
スーパーには混んでいる時間がある。なのに混んでいる時間にしかいけないときがある。そうすると一つのレジにつき十人くらい並んでいることがあって、たった一つのものを買うためにこんなにも並ばなければならないのかとうんざりしたりするのだけど、今日は空いている時間に行くことができた。行くと混んでいた。こういう日もある。塩と食パンだけは絶対に買わなければならなかった。塩のコーナーに行くと「伯方の塩」が売っていて、そのとなりに「なるとの塩」が売っている。伯方となるとは少しは離れているけれど、同じ瀬戸内海ではないか、なのに値段が二倍以上違う。食パンコーナーに向かいながら四国の地図を頭に思い浮かべていると、ミレービスケットが目に止まった。これは高知県のビスケットじゃないか。高知県のぐんにゃりと曲がった

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8月7日
やっと曇ったというのか、とうとう曇ったというのか、とにかく曇った。マクドナルドに行った。アイスコーヒーのSを頼んだ。Mにすると急に値段が跳ね上がる。これならSを2つ頼んだ方がいいんじゃないかと思える。やたらとのぼりやポスターで宣伝しているマックフロートもドリンクのSと100円のソフトクリームみたいなの頼めばいいんじゃないかと思える。こんな割高なもの、誰も注文しねえよ、と思っていると意外にマックフロートは人気があるみたいで、飲んでいる人が多い。ドリンクのSとソフトクリームみたいなの注文しなよ、とみんなに言ってやりたい。座ってコーヒーを読みながら本を読んでいると、隣の隣の隣くらいに座った働いてる風の若い女が電話をしはじめた。周りの関西弁の会話を押しのけて標準語が聞こえてくる。どこの人? と聞いてみたい。

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4月11日
坂道を上っている途中で目に入った山椒の新芽を摘んだ指を鼻に近づける。目が冴えるような気がする。花のつぼみがあるから実をつける山椒だ。その少し上にある梅の木には枯れて縮れた花を突き破るようにして小さな梅の実がなっている。小指の爪の大きさにも満たないくらいの大きさだ。去年はばっさりと切られて梅の実があまりできなかったあそこの梅がたくさん採れれば、今年は梅ジュースを作ろうと思いながら、なおも坂道を上っていく。しばらく上った先に民家が二軒ある。脇の小屋のトタン屋根が黄緑色に塗られていることは覚えている。そこに太陽の光が当たっていればと思うのだけど、今はもう曇りはじめていた。