Shin Yamagata

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水槽




Y村氏は夢を見ていた。
ひよこが三匹いるのだがそのうちの一匹は自分の分身だということはわかっていた。しかしどれが自分の分身なのかわからなくてY村氏は困っていた。ひよこは輪を描くように同じところをクルクルとまわっていた。黄色とピンクと水色のひよこ。一匹を捕まえようとしたとき、Y村氏は水槽の中にいた。Y村氏の周りには金魚と鰹が泳いでいた。足元に転がっている小さな壷からはたこの足が少しだけ見えていたが、たこの足は半透明だったし少し細過ぎるような気もしていた。実はそれはたこではなかった。不思議と呼吸ができていた。体をよく見るとわきの下に鰓がついていてどうやらそこで呼吸をしているようだった。鰓を触ると少しだけこそばゆかった。岩の向こう側に坂本龍馬がいて、Y村氏をこっそり見ていた。Y村氏は頭上に見えている水面を目指して泳ごうとした。二メートルくらいは上へと泳ぐことができるのだがそこからはどうしても上へと進むことができない。Y村氏は水面を見上げながら足をバタつかせていた。足をバタつかせるには履いているゴムぞうりが邪魔だったので、ゴムぞうりを脱ぎ捨てさらに足をバタつかせていた。それでも上へと進まないので履いていた靴下も脱ぎ捨てた。Y村氏の足はニワトリの足だったが、Y村氏は気にすることなく足をバタつかせていた。「あの一味から私は嫌われてしまった。一味とはなんんぞや?一味と七味で唐辛子の味はかわるのかっ???いかんぜよ、いかんぜよ!!」Y村氏は頭の中で繰り返していた。