Shin Yamagata

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「3」




それでも耳がないと言われるから描かなければならなかったけど、描けるわけがない。耳を何度見ても描けそうになかった。手が動かない。耳がどうなっているのかわからない。そうだ、今だって耳なんて描けるわけがない。本当は鼻も描けない。「く」を描けば鼻で「3」を描けば耳だというのは漫画を見るようになって、こんなんでええのか、と思った。こんなんで許されるのか、と思った。そうやって色んな疑問は追及されなくなってどんどん後方へ流れるようになっていってしまったのかもしれなかった。いや、それどころではない。耳なんか描けないと思っていたのに「3」でええのかと思うようになってしまった。同じことを書いている。本当はわかってないし、描けないのに、描けるようになってしまったのだからそれはよくない。今から思えば描けないまま、描けない描けないと思い続けていたほうがよかったような気もするけど、いや、やっぱりそれでよかったのか。いや、よくないな。だから今耳を描いてみればいいのかもしれない。そうするとやっぱり描けないって思う。ああ、これはさっきも描けないと書いた。同じことを書いている。
つづく