Shin Yamagata

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2月12日
何日前だったかは忘れてしまった。去年は正月があけて早々に食べられてしまった下に植えてあるトウネズミモチの実が、今年は全然誰も食べにこないなぁ、なんて言っていたのに、突然、たった1日で、ヒヨドリが何羽もやってきて実を全部食べてすっからかんにして、糞だけあたりに落としまくってどこかへ行ってしまった。なんて呼べばいいのかわからないのだけど、ぶどうを食べた後に残るような「あれ」が木に残っているだけになった。ふさか? ふさのカスというのか、とにかく、1日でこの木の風景ががらっと変わってしまい、そうするとその場全体の雰囲気も少し変わってしまうというか、

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2月18日
問題は多岐に渡っていて、その中でも日々ストレスを与え続けているのが物理的な問題だった。ネガだけではなかった。プリントした写真も同様に部屋を狭めていた。全てをデータ化すればすっきりと片付くはずなのだが、どれほどの時間と労力を費やせばいいのかと考えるだけで嫌になった。捨ててしまうという選択肢もあった。捨てるという行為に及ぶことができれば何もかもがすっきりと片付くはずだった。しかし長年撮りためてきた写真を捨てることはそう簡単にできることではなかった。ネガに収まっている写真にどんな価値があるのかないのか、もはやそんなことは問題ではなかった。他人だから言えるのだが、君の写真に価値なんてものはない。いや、あるのかもしれない。でも最終的には価値などないことがはっきりとしている。誰もが写真を簡単に撮影し、すぐさまネット上に公開できる今となっては、部屋の一部を占拠し続ける「物質」としての写真と、あなたが日々

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3月29日
浜名湖を出発。天気予報通り気温がうんと下がってしまった。Tシャツを二枚着てその上にヒートテックを着て長袖のシャツ、さらに薄手の上着を二枚はおり、その上から合羽の上着を着込んでそしてダウンジャケットでぱんぱんに。早くに出れば寒いだろうから、出発時間を1時間遅らせた。それもよかったのか、出発してもそれほど寒くはない。そう思っていたのは最初の20分で、徐々に体温は奪われていく。それでも昨日と違い今日は薄日が最初から差している。蒲郡で最初のコンビニ休憩。ホットコーヒーとうまい棒。機械から出てくるコーヒーがカップから溢れそうになった。寒さに震える指でボタンを押したから間違ってMを押してしまったのだろうか。そんなことはあるのだろうか。砂糖を2本入れて甘くする。なんとなくその方が体があたたまりそうな気がする。コンビニの駐車場にぺたんと座り、薄日の日光浴。蒲郡から23号バイパスへ。大型トラックの隙間をぬって渋滞する名古屋を一気に通り過ぎていく。

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2月15日
今日が寒さの底だ、と天気予報が何度も言っていた。魚の焼ける匂いとネギを刻む包丁の音。おたまが鍋に触れる音も聞こえてくる。布団の中で聞いている。祖父は早起きで5時過ぎには起きていた。わたしは布団の中で祖父が立てる音、まず、屁をこく、その次にくしゃみをして立ち上がり、足音を響かせてトイレに向かう、トイレの水を流して洗面所で手を洗いそのまま顔も洗う、そのような音を目が覚めないままなんとなく聞いていて、今はそのことを鮮明に思い出せるのだけど、布団を出ればまったく思い出さなくなるこの音と、そして今、祖父が作っている朝食の音とを、頭の中でミックスさせながら新しいリズム、音楽を作り、わたしはまた、

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1月12日
雨が降ったというほどのことはない、というくらいには冷たい雨が降っていた。傘はささない。傘はある。少し雪っぽくもある(のちに聞く天気予報で初雪だと知る)。踏切が閉まって電車が通過し、電車が動かした冷たい空気がぶほっと体にぶつかってくる。踏切を越え、そのまま真っ直ぐ道なりに進んでいく。ここは台地の上だ。もう少し進んでから、右でも左でもどちらに進んでも急な下り坂になる。どちらかといえば尾根に近いような地形なのかもしれない。だけど、住宅街だから「住宅街」だと認識していて、台地とか尾根という言葉は体から遠ざかっている。これら視界に入る住宅や団地の全てがなくなった風景を想像しようとしても、簡単には頭に浮かんでこない。私はこの土地を知るようにな

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4月6日
畑にしゃがみ込んでいたおばあさんは里芋をいじっていた。すんませーん、畑入らしてもろていいですか? はー、どうぞどうぞ。冬の間、シートをかけて畑の脇に置かれていた里芋を今年植えるものと食べるものに分けているらしい。あんたんとこも農家け? いや、うちはちゃいますわ。パキ、パキといくつも連なった里芋を分けていく。土のにおいがあたり一面に広がっている。そっちの小さい方植えるんですか? そや、ほらこれ見てみ、この白いのが芽や、でもあかんな、結構腐っとる。少し写真を撮ってからまたおばあさんのところへ戻り、鹿やうさぎに畑が荒らされること、猿は上の畑にはくるけどここの畑にはなぜかこないこと、けものの

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2月3日
夜中のスーパーに立ち寄った。節分の恵方巻きが半額になって大量に売れ残っている。半額になって300円前後だ。長くて太いのも短くて細いのも、様々な種類が売られている。いつも一本100円で売られている巻き寿司が3本入り、恵方巻きと名前を変えて並んでいる。それが半額になって300円。中身が多少違っていたとしてもこれは節分という名を借りて便乗値上げしたものを半額にしていつもと同じ値段で売っているだけのことではないかと思うのだけどどうなのだろうか。しかしながら、世間のイベントに乗っかり楽しむというのは、こういうことにお金を使うことなのかもしれず、したがって、