Shin Yamagata

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サービスが終了してホームページが消失していたからこのブログにそれらしきものを作りました。
上のこれShin Yamagataをクリックしていただけると、プロフィールみたいなのにとびます。
そこからまたそれぞれにとんでもらえると写真を見ることができるようになっています。今までアップしていなかった写真もアップしましたので見ていただけるとうれしいです。
https://blepharisma.hatenablog.com/entry/1973/01/01/000000

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12月29日
住宅街の中にある緑道を歩いていた。脇の民家の庭に大きな柿の木がある。空の濃い青を背景にしたオレンジの柿の実にカメラを向けていると、おばあさんが話しかけてきた。前にも話したことのあるおばあさんだった。これから散歩に行くところ、今日はよく晴れている、元気の秘訣は何だ、一方的に話してくるのを、はあ、そうですかー、と聞いていると、あの向こうの橋のところで、とおばあさんが言った。この近くに橋はない。だけど、この緑道がかつて川だったことは知っている。おばあさんの頭の中にはここに川が流れていた風景とそこに架かる橋の風景がまだ残っているのだと思い、ここが川のときからこの辺に住んでいるんですか? と聞いてみた。昭和46年まで川だった、畑しかなかった、そこの小学校は畑の中にぽつんとあった。おばあさんが思い描くこのあたりの風景がわたしの頭の中に流れ込んでくる。だけどおばあさんの話はすぐにそれて、別のことを話しはじめる。何度か川の風景の話に引き戻そうとするのだけど、すぐにそれていく。諦めて、おばあさんの息子の話を聞いていた。

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2月12日
何日前だったかは忘れてしまった。去年は正月があけて早々に食べられてしまった下に植えてあるトウネズミモチの実が、今年は全然誰も食べにこないなぁ、なんて言っていたのに、突然、たった1日で、ヒヨドリが何羽もやってきて実を全部食べてすっからかんにして、糞だけあたりに落としまくってどこかへ行ってしまった。なんて呼べばいいのかわからないのだけど、ぶどうを食べた後に残るような「あれ」が木に残っているだけになった。ふさか? ふさのカスというのか、とにかく、1日でこの木の風景ががらっと変わってしまい、そうするとその場全体の雰囲気も少し変わってしまうというか、

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2月18日
問題は多岐に渡っていて、その中でも日々ストレスを与え続けているのが物理的な問題だった。ネガだけではなかった。プリントした写真も同様に部屋を狭めていた。全てをデータ化すればすっきりと片付くはずなのだが、どれほどの時間と労力を費やせばいいのかと考えるだけで嫌になった。捨ててしまうという選択肢もあった。捨てるという行為に及ぶことができれば何もかもがすっきりと片付くはずだった。しかし長年撮りためてきた写真を捨てることはそう簡単にできることではなかった。ネガに収まっている写真にどんな価値があるのかないのか、もはやそんなことは問題ではなかった。他人だから言えるのだが、君の写真に価値なんてものはない。いや、あるのかもしれない。でも最終的には価値などないことがはっきりとしている。誰もが写真を簡単に撮影し、すぐさまネット上に公開できる今となっては、部屋の一部を占拠し続ける「物質」としての写真と、あなたが日々

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3月29日
浜名湖を出発。天気予報通り気温がうんと下がってしまった。Tシャツを二枚着てその上にヒートテックを着て長袖のシャツ、さらに薄手の上着を二枚はおり、その上から合羽の上着を着込んでそしてダウンジャケットでぱんぱんに。早くに出れば寒いだろうから、出発時間を1時間遅らせた。それもよかったのか、出発してもそれほど寒くはない。そう思っていたのは最初の20分で、徐々に体温は奪われていく。それでも昨日と違い今日は薄日が最初から差している。蒲郡で最初のコンビニ休憩。ホットコーヒーとうまい棒。機械から出てくるコーヒーがカップから溢れそうになった。寒さに震える指でボタンを押したから間違ってMを押してしまったのだろうか。そんなことはあるのだろうか。砂糖を2本入れて甘くする。なんとなくその方が体があたたまりそうな気がする。コンビニの駐車場にぺたんと座り、薄日の日光浴。蒲郡から23号バイパスへ。大型トラックの隙間をぬって渋滞する名古屋を一気に通り過ぎていく。

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2月15日
今日が寒さの底だ、と天気予報が何度も言っていた。魚の焼ける匂いとネギを刻む包丁の音。おたまが鍋に触れる音も聞こえてくる。布団の中で聞いている。祖父は早起きで5時過ぎには起きていた。わたしは布団の中で祖父が立てる音、まず、屁をこく、その次にくしゃみをして立ち上がり、足音を響かせてトイレに向かう、トイレの水を流して洗面所で手を洗いそのまま顔も洗う、そのような音を目が覚めないままなんとなく聞いていて、今はそのことを鮮明に思い出せるのだけど、布団を出ればまったく思い出さなくなるこの音と、そして今、祖父が作っている朝食の音とを、頭の中でミックスさせながら新しいリズム、音楽を作り、わたしはまた、

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1月12日
雨が降ったというほどのことはない、というくらいには冷たい雨が降っていた。傘はささない。傘はある。少し雪っぽくもある(のちに聞く天気予報で初雪だと知る)。踏切が閉まって電車が通過し、電車が動かした冷たい空気がぶほっと体にぶつかってくる。踏切を越え、そのまま真っ直ぐ道なりに進んでいく。ここは台地の上だ。もう少し進んでから、右でも左でもどちらに進んでも急な下り坂になる。どちらかといえば尾根に近いような地形なのかもしれない。だけど、住宅街だから「住宅街」だと認識していて、台地とか尾根という言葉は体から遠ざかっている。これら視界に入る住宅や団地の全てがなくなった風景を想像しようとしても、簡単には頭に浮かんでこない。私はこの土地を知るようにな