Shin Yamagata

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8月9日
昨日より暑い気がする。12時を過ぎたところで少し休むことにした。風のある日陰を見つけて地べたに座り込む。すぐ近くでは、工事現場の人達も地べたに座って弁当を食べている。15分ほど、と思っていたのだけど、なんとなくもう少し休んだ方がいい気がして、足を投げ出した。工事現場の人達は弁当を食べ終わり、地べたに寝転び昼寝をしている。ツクツクボウシが鳴いている。橋の向こうから制服を着た女子高生が歩いてきた。こんにちは。こんにちは。長袖を着ていて膝くらいまである長くて白い靴下を履いているから日に当たる部分が少なくていい。どこまで歩いていくのかわからないけれど、当分の間、日陰がなさそうな道だ。

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12月18日
昨日、牛乳がまだあるのに牛乳を買ってしまったから久しぶりにシチューを作ろうと思った。帰りに寄ったスーパーの鶏もも肉が特売だった。野菜は別の店で買おうと商店街を歩く。カリフラワーが150円、カブが89円。白いものばかりだと思ったのは野菜を切る段階でのときで、買っている時点では色のことまでは考えていなかった。ジャガイモはあるから買わなかった。玉ねぎもあるから買わなかったのだけど、玉ねぎは入れるのを忘れた。もも肉を手頃な大きさに切り、塩を振って火にかける。少しニンニクも入れてみようとみじん切りにする。ニンニクを入れてもも肉をひっくり返す。少し焦げておいしそうになっている。

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7月12日
あと一週間くらいぐずついた天気が続くと天気予報が言っていた。例年よりも気温が低いものの、冷夏にはならないだろうとも言っていて、1990年代に冷夏があってそのときは米がダメになったとも言っていて、大学の学食のお米が全部タイ米に変わったあのときのことだろうかと思ったのだけど、ぼんやりと聞いていてきちんと何年とは聞いていなかった。だけど、たぶんそうなのだろうと思うのだけど、あのとき、自分でもタイ米を買ったのかどうか、でも学食で食べて、やっぱりそんなにおいしくないと思った記憶があって、そのときなのか、そのときとは別のときなのか、日本米だけど安いコメを買って、それもおいしくなくて、毎日食べるお米はできるだけケチらないようにしなければならないと思ったのは、だから、そのタイ米の時期なのか、ただお金がなかった時期なのか、どうもはっきりしなくて、今年もお米が不作になるということはないのだろうけど、気候によって、人間も人間以外の生き物も食べ物に支障をきたすというのは事実で、自身の生命の維持、なんてことは普段考えることもなく、ただ、あいつがむかつくとか何が食べたいとか蝉が鳴いたとか

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10月1日
内田百間「第三阿房列車」を読んでいた。
「まあいいです。先生は写真は嫌ひですか」
「写真つて、写真を写す事か」
「どつちでもいいですけれど」
「人に物を聞いて、どつちでもいいはないだらう」
「それでしたら、写される方です。写されるのは嫌ひですか」
「嫌ひだね」
「なぜです」
「どうも貴君の話し方は無茶でいかん。突然なぜですと云ふのは無茶だ」
「はあ」
「一体好きだの嫌ひだのと区別する迄もないだらう。写真を写されるのが好きだと云ふ者がゐる筈がない」
「さうでせうか」
「レンズを向けられて、狙はれてゐる様で、そのうしろから変な目つきでこちらを窺つてゐる。さう云ふ奴の餌食にはなりたくない」
「さうですかね。それでは先生が写す側になるのはどうです」
「僕が写真を写すのか」
「さうです」
「僕は写真を撮つて見ようと云ふ考へを起こした事はない」
「嫌ひですか」
「嫌ひにも好きにも考へた事がないから、嫌ひだか好きだかわからない」
「面白いですよ」
「どう面白い」
「それは一口に云へませんけれどね、やつて御覧なさい」
「それで、だれを写す」
「僕だつていいです」
「貴君を写してどうなる」
「現像すると出て来ます」
「出て来たつてその顔で、もともとだ」
「人物には限らんです。景色はどうです」
「景色など写しても、景色の方で写されてゐると云ふ反応がないからつまらない」
「さうなんだ。先生には写されてゐると云ふ反応があつて、それで写されるのが嫌ひなんですね」
「要するに僕は写されるのも写すのも好きではない」
「それではどうします」
「どうしますつて、もともと僕はどうするとも云つてやしない」
「いけませんか」
「何が」
「写真を写すのは」
「写されるのは御免蒙る。写すのは面倒臭くていやだ」
「面倒ではありません」
「機械いぢりは僕の性に合はないから駄目だ。やつたらきつと、こはしてしまふ」
「僕がお教へしますけれど」
「さあもう少し注がう。手許の杯をほつたらかしておいて、なぜそんなに写真の事ばかり話すのか、その心底が僕には計り兼ねる」

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5月31日
今日は休むことにしていた。今週は夜に人と会うことが多く、疲れていた。まだ8時くらいだろうと目を開けると10時を過ぎていた。それでもまだ眠い。のそのそと起き出して洗濯をしたりあれやこれやとやっていると14時を過ぎていた。だけど感覚としてはまだ昼前だから、時計を見て驚く。何かをやる気がまったく起きない。それでも、外へ出てドラッグストアに行って洗剤を買い、スーパーでレタスとトマトとヨーグルトを買った。古本屋に寄る気も起きないから素通りして裏道へ入っていく。猫が道の端に座っていた。座ってただじっとこちらを見ていた。前を通るときにも首を動かさないでじっとしている猫を見て、わたしは見られているわけではなかったと気が付いた。道路を渡り大きなマンションの脇を通っていく。八重桜の濃い葉

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4月2日
通行止めの看板があり、係の人が、10時から10時15分の間に通れます、と教えてくれた。その次に通れるのは12時から13時の間。工事現場で働く人たちの休憩時間に通れるということらしい。道の先は行き止まりで、集落が1つあるだけだ。ということは、10時に入って2時間から3時間撮影して戻ってくればいいということになる。ちょうどいい時間だ。道の駅まで戻り、10時まで冷え切った体を日向であたためる。道の駅を10時前に出て集落までの狭くて急な坂道を上っていく。途中、地面にベタッと座り込んで休む工事現場のおじさんたちの横をすり抜けていく。到着してカメラを出しているとすっと影に覆われた。空を見上げるといつの間にか雲がたくさん出ていた。