Shin Yamagata

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1月5日

近所を少し歩いた。日影は寒い。日向は春みたいにあたたかい。脱いだ服が邪魔でしょうがない、というのを何度か経験してきたから、薄い上着にマフラーも手袋もしていない。暖冬だ暖冬だというけど、ほんとうに暖冬だった。空が青い。少し前に雨が降った翌日ほどではないけれど、空気がまだ澄んでいる気がする。カメラを持って出てきてよかった。影が長い。コントラストが高い。向きによっては影ばかりになってしまうから、冬はカメラの方向が限られる。そういえば、ラジオから篠山紀信が死んだというニュースが流れていた。篠山紀信の写真集は二冊だけ持っている。オーストラリアかどこかの航空会社が出したらしいのかなんなのかよくわからないけど、オーストラリアを撮影した写真集と山口百恵を写した写真集だ。両方とも古本屋で見つけて、よかったし安かったしで買った。葉を落とした庭木の影が家の壁に落ちている。そういうのにいちいち目が向いてしまう。葉が落ちると枝の隙間から向こうが見えた。それが冬のいいところだと思っていた。角を曲がってゆるい坂道を下っていく。リンゴやモモの木が植えているところを目指して歩いていく。その脇にこぶしの大きな木があるのだけど、

8月7日
3人でこれからハンバーグを食べようというのに、駅から続く商店街で大きな唐揚げを9個、3種類の味を3つずつ買ってしまった。そのあと、ビールを買います、とスーパーに入っていく2人を見送って、唐揚げを持って外で待つことにした。わたしはお酒が飲めなかった。すでに暗くなっているというのに、サウナかと思うくらいに外は蒸し暑かった。マスクをしているのがつらかった。じっと立ち止まっているとなおさら苦しい気がしてきた。向かいの肉屋を見ていた。売り場の人はもちろん、買う人も全員マスクをしていた。人通りの多い道でマスクをずらした。目の前を通り過ぎる人、サラリーマンも学生さんも小さな子供を連れたお母さんもみんなマスクをしていた。マスクをしていないのはだいたいいつもおっさんだった。わたしもおっさんだからちょうどよかった。マスクを外していても街に馴染んでいた。空を見た。街灯が明るすぎて星は見えなかった。ビールを買って


8月29日
8時ごろ出発。国道20号を終点まで原付で行く予定。八王子あたりまではきたことがあったけれど、そこから先は初めてだった。高尾山まで来ると急に山の風景に変わって、上って下りると相模湖だった。なんとなくダム湖っぽいけど、相模湖がどういう湖なのかは知らない。高尾山あたりは少し涼しく感じたけれど相模湖に下りるとまた暑さが戻った気がした。雲が一つもなかった。日陰のない道路をひたすら走っていると少し頭がくらくらと揺れる気がしたからコンビニに避難した。冷たいスポーツドリンクを一気に半分くらいまで飲んで、トイレで濡らしたタオルを首に巻いた。お腹にまで水が垂れてくるくらいにびしょびしょに濡らした。コンビニから原付を出すと、濡れた首の周りとTシャツで少しは涼しい。山梨県に入って上野原という町を通過していく。国道沿いに並ぶ商店のほとんどがシャッターを下ろしていて、いかにもという感じで寂れている。その風景を見て、もうここは東京ではない、と思った。とりあえず知っている地名の大月を目指して走って行く。青春18切符で移動したときに大月で乗り換えた記憶がある。その印象だけがある町で、大月が何県だとも知らなかった。