Shin Yamagata

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4月10日




新入社員は電話機の扱い方のレクチャーを受ける。
電車の中でもすぐに新入社員だとわかるのは着ているスーツも鞄も靴も新しいし、髪も黒いからだった。もちろんスーツも黒い。だから、わたしはこの4月から新入社員として働き出したのです、と宣言しながら新入社員たちは歩いている。恥ずかしいとか恥ずかしくないとか新入社員に見られているとかそういったことさえ気にすることがない、気にすることがないというよりもなんのことなのかわからない。身に付けているものだけではなく顔つきも違っている。なぜ顔が変わってしまうのか、そんなことは専門家に任せたい。そしてこれはいわゆる「ホワイトカラー」のことだ。「ホワイトカラー」の人たちは目に付きやすい。わたしが都内に住んでいるから。わたしの目に付かない新入社員の人たちもたくさんいる。例えば広島の瀬戸内海に面した町ではスーツを着ていない新入社員たちが狭い駅の改札口を抜けて造船所に向かってぞろぞろと歩いている。わたしは瀬戸内海でそのような光景を見たことがない。わたしが見たのはお昼の12時のサイレンが鳴った直後に自転車に乗った外国人(アジア系)が造船所からぞろぞろと出てくる光景だった。