Shin Yamagata

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4月18日




山の斜面にある集落内には10軒くらいの家がある。元々は茅葺きで上にトタンを被せた三角形の赤い屋根をしたその集落の中でもかなり古い家の玄関先で、しわくちゃの老婆がゆっくりとした動きで手招きをしているのが目に入った。目が合った老婆は無表情無言のまま手招きを繰り返し頭をカクンカクンと上下に揺らした。後ろを振り返っても誰もいないからわたしに向かって頭を揺らしているようだった。おそるおそる門をくぐり玄関先へ行くと「ちょうどええときにきた、今アイスクリーム食べようと思ってたとこやから一緒に食べよう、まー、入りなさい。」玄関を入って上り框に腰を下ろすと奥からもっとしわくちゃの老婆が出てきた。聞けば94歳になるという。94歳の老婆はアイスクリームを口の周りに垂らしながらおいしそうに食べ、玄関から見える山を指さし「あの山のあそこに田んぼがあった、行くのも大変で行くのが嫌やった、それでも毎日水を確認するためにあそこまで行ってた、嫌やった。」