Shin Yamagata

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6月6日




雨でどうせ濡れてしまうのだからゴム草履で出掛けた方がいいと言って出掛けた男を見送った女は、近所ならまだしもいくら私服で通ってもいいとはいえ仕事場にゴム草履を履いていくような男とどうして一緒に暮らしはじめたのだろうか、と一階にある駐輪場の波打った鉄板でできた天井に雨が当たる音の隙間に男のゴム草履を引き摺る音を聞き分け、大きな息を一つ吐いた。とりあえずわたしは仕事を辞めたばかりでここを出て行けば路頭に迷うようなだらしのない女なのだからがまんするしかない、ともう一つ大きく息を吐いた女は掃除機のスイッチで雨音を消し去り、敷きっぱなしの布団と壁の間から見えている畳の上を掃除する。