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10月12日
斜め前に座っているスーツを着た20代前半の女がカバンから取り出したパンを食べはじめた。早朝の電車にはまだ席の余裕がある。コンビニの袋を顔に近づけ女は小さくパンを囓る。何パンかはわからない。パンをすべて食べ終えると、今度は化粧をはじめた。目元がぱっちりとして頰に赤みがさしてくると、ついさっきまでのその女の顔に、まだ中学生のような幼さが残っていたことに気がついた。そういうことに気づいてしまった自分を、もう一人の自分が眺めている。お前もすっかり老人の仲間入りだ、もう一人の自分がわたしに話しかけてくる。その女を見るのをやめ、それからは窓の外のマンションや街路樹などを眺めていた。