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8月8日
バタン、と車のドアを閉める音が下の方から聞こえた。今日はもう2つ目の集落を歩いているのに、暑すぎるからなのか、まだ誰にも会っていなかった。下へくだっていくと、赤ちゃんを抱いた父親と母親が車の脇に立っていて、母親は赤ちゃんと父親に虫除けのスプレーを吹きかけている。2人が同時にこちらに気づいた。こんにちは。こんにちは。少し早い里帰りだろうか。そのまま坂を下っていく。逆光気味だからときどき振り返って風景を眺める。水が流れているところで立ち止まり三脚を立てていると、坂の上をさっきの夫婦が歩いていく。わたしは見ているけれど、夫婦はこちらに気づいていない。水と草に向かってシャッターを切る。蝉の声しか聞こえない。