Shin Yamagata

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12月11日
夜に住宅街を歩いていると、暗闇の中から花の甘い香りが漂ってきた。どこからだろうとあたりを見回すのだけどわからない。見上げると、塀を越え出た背の高い木の枝の先に白いものが見えた。びわの木だった。花を鼻に引き寄せて香りを確認したいのだけど、花にまで手が届かない。手が届かないのだから、このにおいがびわの花だとは言い切れなかった。庭の奥で別の花が咲いているかもしれない。庭の奥に目をこらした。暗闇と窓から漏れる明かりが見えるだけだった。去年も同じようなことをした気がした。去年はどこの木だったのだろうか、この木ではなかったはずだ、白くぼんやりと浮かび上がる花を眺めながら判然としない記憶の