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2月9日
まあまあ寒かった。ということは今年はあたたかい冬なのかもしれなかった。寒くて忘れられないのは冬に奈良の山奥の集落に撮影に行ったときだった。ダウンを着ていれば大丈夫だと思っていたのだけど、ダウンでは間に合わなかった。ダウンの下にはフリースを着ていたし、その下にまだ長袖のシャツとヒートテックとTシャツも着ていた。歩いて撮影をしていれば体はあたたまってくるのだけど、その日は冷たい風がビュービュー吹いていて、一向に体があたたまらなかった。むしろ体が冷えていっていると感じていた。もう帰りたいのに、次のバスがくるまでまだ数時間はあった。お店なんかどこにもなかった。もう耐えられないと思って無人の小屋の中に入った。扉が開いていたから入って扉を閉めた。風が体に当たらないだけであたたかく感じた。ビニールが破れて綿が飛び出た椅子があったからそこに座って体を丸めた。扉の隙間から杉の木が風で揺れているのが見えていてときどき雪も舞っていた。ライターを持っていればそのへんのものを燃やしたかもしれなかった。今度からライターくらいは持ってこようと思った。バスの時間が来るまでとにかく