Shin Yamagata

お知らせ  zine  Twitter   Instagram


 




その日はよく晴れていて空を見上げても青い色が見えるばかりで雲は一つも見えなかった。雲があれば空がどれくらい高いところにあるかがなんとなくわかるような気もするけれど、青い色しか見えない空は遠いのか近いのか、そこに空間があるのかさえよくわからなくなってしまう。最近は午後になると雲が増えてくるような日が多かったので、午前中のうちにカメラを持って散歩に出かけることにした。
この季節になるとよく見かける赤やピンクや白い花をつけている濃い緑の葉の低い木はさざんかなのだろうか。家を出てすぐ右側にあるマンションの周りをきれいに刈り揃えられたツツジの生垣が囲んでいる。びっしりと隙間なく植わっているそのツツジの隙間から葉っぱがまばらで細くてひょろりとした木がところどころに突き出していて、その木にも赤い花がついている。背景を少し変えながらこの木はもう何枚も写真に撮っている。その日もその木に向かって二回だけシャッターを押してみた。
いつもと変らない道を歩き始めいつも写真を撮る畑の横を通りながら、その向こうに見えている少し大きな道路を走っている黄色いミキサー車を眺め畑の中へ入っていった。畑に植わっている枯れかけたトマトの葉にピントを合わせたり、傷だらけのトマトの実にピントを合わせたり、茎にピントを合わせたりしながら写真を撮っていると畑にいたおじさんが近づいてきた。何かと思えば泥棒と思ったらしい。明るい昼間からわざわざ畑仕事をしているおじさんがいる畑で何かを盗もうとする泥棒なんているのだろうかと思いながらおじさんと少し話をすると、最近毎日泥棒が入って野菜を盗っていくということだった。写真を撮ったらすぐに畑から出て行くように、そうじゃないと泥棒と間違えられるから、と言われてからもしばらく畑の中をうろうろしながら植わっている野菜や畑に突き刺さっている棒や畑の向こうにあるマンションにカメラを向けていた。




ホームページのトップの写真を変えました。
http://www.geocities.jp/ymgtsn_p/