広告

目の前の広告はカルピスだった。名前は忘れたけどよく見かける女の背中には白い羽が生えている。そしてこちらを見ている。正確にはカメラを見ていた。もちろん女の手にはカルピスが握られている。全体的に白いその広告の下には左右で目の大きさの違う三十歳くらいの女が座っていた。右目の方が少し小さい。口にはガムが入っているようで開きはしないものの常にモグモグと動き続けていた。広告の女は白い服を着ている。その広告の下に座っている女は黒い服を着て青いジーンズをはいている。ひざにはかばんが二つ乗っている。かばんは二つより一つの方がいいだろうと思っていた。その女の顔と広告の女の顔を比べてみる。広告の女は笑っていた。女は高田馬場で降り、その次にその席に座ったのは二十歳くらいの女だった。女のひざの上にはかばんが一つ乗っていた。