Shin Yamagata

お知らせ  zine  Twitter   Instagram


 

線路




晴れていた。その日も特にやることがなかったのでとりあえず歩いてやるぞと思ってカメラを首からぶら下げた。最寄の駅の線路から南へ進むと別の線路に突き当たり、その線路も通り越してさらに南へ行くとまた別の線路に突き当たる。そこまで歩いてやるぞと思った。歩きながら写真を撮ってやるぞと思っていた。歩き始める前からわかっていたことだったけど、逆光だった。それでも北へと向かわなかったのは北へ向かうと次の線路にいつぶつかるのかわからなかったからだった。歩き出すと眩しかった。梅干を食べたような顔で歩くしかなかった。目の中の絞りでは追いつかないから目を細めるしか仕様がなかった。だからさらに何も見えない。このままだと写真は撮れないから時々振り返ってシャッターを押していた。振り返るまではどんな風景がそこにあるのかわからないけど、振り返ったときはそこがどんな風景でもせっかく振り返ったのだからとシャッターを押すことにしていた。こんな理由で写真を撮っていてもおもしろい写真が撮れたりするのだから、その写真に対して付け加えるべき言葉ははじめからなかった。一つ目の線路に到達したときに、もう戻ろうと思い振り返った。振り返って三歩歩いただけで順光によってべったりと見える光景が目に飛び込んできすぎで、道路も空も建物の壁も木も人もべったり色を塗られた何かのようでそういうのがたまらなくまた逆光の方向へ振り返りもう一つ先の線路まで歩かなければならないと思い直してまた歩き始めた。逆光の中で目立っていたのは透過光だった。