Shin Yamagata

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気泡




「キュイ〜」と。現像液から停止液に印画紙を移すと紙が鳴き、紙は小さな気泡を出し始める。光の痕跡が残ったフィルムにもう一度光を当て、そのフィルムを通過した光を印画紙へ当てる。銀塩写真は光によってつくられる。「キュイ〜」と紙の鳴く音を聞きながら光のことを考える。定着液を纏ったできたての写真を見ながらその画像の中に見えるかつてその場にあった光の事を思い出す。機械より与えられた光とかつて太陽から与えられた光によって一枚の印画紙へと画像は定着された。傾いた電柱と画面の奥へと向かう道があり、その道には電柱の影が色濃く落ちている。撮影されたのは夏の昼前後の時間帯だということが影の長さから窺い知れる。写っている電柱は画面の上方で切れているが、影の電柱は先まで地面に写り、画面には入っていない電柱の上部に取り付けられている街灯の影も地面にはきちんと写し出されている。かつての光はある物体により遮られ、影という形でもう一つの画像を画面に与えている。ここにもう一つの写真を見ることになる。かつての光、引き伸ばし機から発せられる光、かつての光が作り出した影。印画紙から出てくる気泡を見ながら思考は光の堂々巡りへと向かい、眩暈を起こす。。。なんてのはウソで、暗室作業中はただ音楽を聴きながらケツを振ってるだけなのであった。