Shin Yamagata

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隣におばさんが座った。年齢は45歳から65歳の間だろう。「隣よろしいですか?」と言って座ったのだった。小さなおばさんでヨロヨロ歩いているのを見ていたから座るのは当然だろうと少し離れたところにあるベンチに座って煙草を吸っていた50歳くらいの男は思っているはずだった。おばさんは話し始めた。「すい炎は食べられないのよ。」と。年齢を重ねれば病気の話になるのは仕方のないことだと思っていた。「唯一食べていいと言われていた鳥がわたしは昔からダメなのよ。」と、話すのはもちろん「肉」に限っての話だ。鳥をシメるでしょう。わたしが子どもの頃の話よ。首を落とされて切り口から血を吹き出した鳥がね、こうやって羽をばたばたさせながらわたしを追いかけてくるの。それ以来鳥はダメなのよ。もう食べられない。だからフォアグラもダメなのよ。