Shin Yamagata

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2月22日
職種は違うものの、彼女も最初は新人だった。何も知らない、世間も知らない、挨拶の仕方も知らない彼女は先輩に付いてまわりながらいろいろなことを覚えた。行く場所それぞれのしきたり、関わる人それぞれのクセ、立ち居振る舞い。出入りの業者だから何があってもひたすら頭を下げなければならなかった。相手が間違っていたとしても、こちらが間違っていたことにしなければならなかった。先輩がいなくなり、一人で任されるようになって、どんなに理不尽なことを言われたとしても、彼女は頭を下げ続けた。頭を下げながら、お前なんか一歩外へ出たらただのおっさんだ、ただのブタだ、せいぜいこの場所でだけえらそうにしてたらいいんだ、お前みたいなやつにはいつか天罰が下る、そうに違いない、そう思っていたおっさんたちは、気付けば天罰が下るどころかどんどん地位を上げていき、役職名が変わり、着ているスーツの光沢が増していった。彼女は何も変わらなかった。むしろ、最初に着ていたスーツよりも安いスーツを