Shin Yamagata

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4月9日
よく晴れた。標高が比較的高いここはちょうど桜が満開になっていた。斜面の上から犬の鳴き声が聞こえてくる。まだわたしの気配が犬に伝わる距離ではなかった。だから犬は他の誰かに吠えていた。一匹ではなくて二匹だった。鳴き声が違うし、聞こえてくる高さも微妙に違っていた。どちらかの犬がもう一方の犬の声に反応して吠えているのかもしれないし、犬と犬の間に誰かがいるのかもしれなかった。しばらく下の方を撮影して上にいけば、わたしもあの犬に吠えられるのかもしれなかった。案の定吠えられた。最初、鈴の音が聞こえていた。畑に取り付けられた猿よけか何かの鈴が風に吹かれてチリンチリンと鳴っているのだろうと思ったら、犬の首輪に付けられた鈴だった。犬はわたしを見て激しく吠えた。近づけば一層激しく吠えられる。吠えられながら一枚写真を撮って、階段を上っていく。犬は黒っぽい茶色の中型、甲斐犬が混ざった雑種かもしれない。最近はミックスというらしい。犬が鳴きやんだのは