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終点に着くのは午前10時過ぎ。次にこの終点から折り返し出発するバスは午前10時過ぎに到着したバスと同じバス。時間は15時過ぎ。運転手も同じ。だから特に何があるわけでもない、あえて言うなら自動販売機があるだけの山間の小さな村で年老いたバスの運転手の男は時間を潰さなければならない。
川沿いの道に民家が三軒建っているところがバスの終点でそこにはバスのためにつくられた屋根のある車庫がぽつんと建っている。一人の乗客を降ろした後、運転手はバス停の横にとめてあった赤い軽自動車に乗り込み、バスを運転してきた道を逆走する。終点のある集落から四つ目の集落にある自宅に向かうためだ。