Shin Yamagata

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6月24日
紙袋を六つも持った男が女をエスコートして店内に入り、わたしたちが陣取るテーブルの隣に腰を下ろした。紙袋はおそらく女のために買ったものだろう。見覚えのあるブランド名が紙袋に印字されている。男はとにかく女に金を使いたい。金を使いたくて仕方がない。金を使いたがっている男はどこかぎこちない。何か緊張している風にも見える。食べるペースも女の方が早い。男のナイフを握る手はどこかがおかしいのだけど、どことはいえないおかしさで、口の開け方さえおかしい。女を意識するあまりメシを食えない状態か。お前の目の前に座る女は、はじめてお付き合いする方なのか。女のメインは牛で男は魚。女は肉を切っては次々に口へと運んでいく。鼻の穴を膨らませて肉とパンの両方を口に放り込む。メインの皿が下げられしばらくすると、パチパチと火花を散らす花火がささったプレートが届けられた。店員が目を輝かせる女に向かって「お誕生日おめでとうございます」と笑顔で言っているのに、男の顔は蒼白でひきつっている。