Shin Yamagata

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12月14日
通常500円のケバブが300円で売られていた。セールと書いてある。肉が電気の炎に炙られてゆっくりとくるりくるりと回ってはいるのだけど、白い蛍光灯に照らされた店内はガランとしていて誰もいない。脇のビルの階段の陰で背中を向けてスマートフォンを触っている男が店員かもしれないけど、背中を向けていたらお客がきたのかどうかもわからないのだから、あれは店員ではない。300円なら久しぶりに食べてみてもいいかもしれない。店に近づき店頭に張り出されたメニューを見る。甘口、中辛、激辛など、辛さが5段階あり、もう一種、ガーリックヨーグルト、みたいなのがある。そういうのは食べたいとは思わない。店頭に立っていても店員は現れない。肉はくるりくるりと回っている。階段の陰の男は相変わらずスマートフォンを見つめていてこちらを見る気配がない。ケバブを売っていてもおかしくないようなその男の見た目は気になるのだけど、他に正真正銘の店員がいるはずだと思ってあたりをきょろきょろと見まわす。