Shin Yamagata

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2月17日
久しぶりに写真家と呼ばれている人たちに会った気がする。いつぶりだろうか。写す側と写される側の関係というか、写す側には写される側を搾取するという問題が常につきまとうよね、というような話をしていると、一人が「楽しければいいじゃないですか」と言い放った。これが中学生や高校生なら別に何も思わないというか、ゆっくり落ち着いて話せたのだろうけど、そいつが40も過ぎたおっさんだから、こっちのおっさんがブチギレた。アフリカの少数部族を撮影しているなんとかなぎという女の人の話題も出ていただろうか、いや、あれはそのあとだったか。とにかく、いまから思えばもっといい例えがあったのだろうけど、楽しければ人を殺してもいいのか、みたいな極端なことから話がはじまった。怒っているそのおっさんの怒りがさらに加速していく。ただただ怒るおっさんで、そのおっさんが人を殺しかねない勢いで怒っている。拳でどかんとテーブルを殴るとテーブルの上のビールジョッキの全てが宙に20センチは浮き上がった。ガガガッと椅子を引く音が店内に鳴り響く。顔を上げると周りのテーブルの他のお客がみんなこちらを注目している。事件性を察知したのか、スマートフォンをこちらに向けているものもいる。これはいかん! 炎上だ! と思った別のおっさんが突然怒鳴りはじめる。お前、あれだ、どこかの学校で講師をしているあの写真家は、生徒に手を出したとかで、それが、言いにくいけど、ヤリ逃げっていうの? そんなことだから、女子生徒が学校側に訴えて、その写真家が学校側から「ほどほどにしてもらわないと困ります」なんて言われた、なんだよそれ、その学校の対応! ふざけんじゃねーぞ、学校もだけど、その写真家もだよ! クソみたいな奴ばっかじゃねーか、そこに忽然と現れたヒゲの写真家が、まーまー落ち着きなよ、それ、噂でしょ? そうだけど、なんか文句ある? 噂をそんな大きな声で言っちゃいけないよ、そんなのわかってるよ! スマホで撮られてるってのもわかってるから、こっちはその写真家の名前も学校名も伏せてるんじゃねーか、お前、誰だよ! 収拾がつかなくなってきたこの状況を見かねた女の写真家が、くそっせまっくるしいちいせえ世界で何をくだくだ言ってんだい、女を代表して言わせてもらう! と椅子の上に立ち上がり服を脱ぎはじめた。脱いでも脱いでも裸にはならない。もう春が近いとはいってもまだまだ寒かった。何枚着込んでいるの