Shin Yamagata

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8月1日
朝から曇っていて、あたりに均質な光を注いでいた空が薄暗くなりはじめ、夕方には雨が降りはじめた。雨音を聞きながら本のページをめくってゆく。イグサの香りと雨の匂い。窓から差し込む光は弱々しいのに、文字から浮かび上がる鮮やかな映像が頭の中を駆け巡る。今日という日がこうして終わりに向かって進みはじめていることを正子は喜んでいた。そろそろ晩御飯の支度をしなければならないのに降り出した雨のせいで買い物に出かけるのが億劫になっていた正子は冷蔵庫の中に何が入っていたかということを思い出そうとしていた。ウインナーと卵とレタスとトマトとシワの寄ったなすびと腐りかけのかぼちゃがあったかしら。