Shin Yamagata

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12月15日
朝、山手線に乗っていた。高田馬場から乗ってきたその女を、帰りの電車まで覚えていたのにはいくつかの理由があった。背が高かった。刈り上げるくらいに髪が短かった。電車に乗ればほとんどの人がスマホをいじりはじめるのに、その女は文庫本を読みはじめた。そしてその文庫本が図書館で借りた本だった。半透明の緑の付箋がしおりがわりにつけられていることも覚えていた。乗り換えのためにわたしは新宿で降りたのだけど女はそのまま品川方面に遠ざかっていった。帰り、まだ夕方になる前で明るかった。わたしは行きと全く逆の順序で電車に乗っていたから新宿でまた乗り換え山手線に乗り込んだ。空いていたので座ると、朝に見た女が目の前に座っていた。朝と同じ本を読んでいた。緑の付箋もついていた。朝は本の最初の方を読んでいたのに、今は本の後半を読んでいる。この女は山手線をぐるぐる回りながら朝からずっと本を読んでいたのかもしれないと一瞬思ったのだけど、内回りと外回りが入れ替わっているからそうではなさそうだった。仕事中に本を読み進めたのか、本を読むのがものすごく早いのか、そんなことを思っていると高田馬場に着いて女が立ち上がった。女は朝も今も