Shin Yamagata

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6月11日
ずいぶんと日が長くなった。もうすぐ夏至だった。まだ明るい夕方の台所に立っていると、外からツバメの鳴き声が聞こえてきた。近所でツバメは見かけなかった。気のせいだと思った。それでも耳の奥でしばらくツバメが鳴いていた。幻聴が聞こえるようになったのかと思いながら窓を開けた。目の前の電線にツバメがとまっていた。一匹だけだった。羽を広げて脇の下に顔を突っ込んで毛繕いをしていた。顎の下の赤が見えた。窓の高さと電線の高さが同じでよかったと思った。しばらく見ていた。もう鳴かなかった。もう少し見ていれば別のツバメが来るかもしれないと思ったのだけど、火に掛けていた鍋が気になるから窓を閉めた。耳だけは窓の外に残していた。鍋の中を見ながら、近くに巣があるのだろうか、それとも