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6月24日
38歳くらいに見える男が隣の席に座った。アベノマスクみたいなガーゼの小さなマスクをしているのだけど鼻が出ていた。顎も出ていた。くるんとカールしたマスクが男の口元だけを覆っている。その男がくしゃみをした。あーっ、と、くしゃみのあとにため息のようなものも吐き出した。なんとなく汚い男だなと思っていたのだけどさらにその男が汚く見えてきた。サラリーマン風ではなかった。Tシャツにチノパン、Tシャツがベージュだから全体的に薄茶色い男。足元は草履。草履はねずみ色。パソコンを開いて何かを打ち込んでいた。リモートワークなのだろうか。会社には出社していないのか、だらしなく生えた髭がアベノマスクみたいなのから漏れ出ていた。じっと見ているわたしの視線に気づいたのか、男がこちらに顔を向けた。わたしは何かを言うつもりはなかった。トラブルにも巻き込まれたくはなかった。わたしは男から目を逸らさなかった。男がすぐに目を逸らした。わたしは男を見続けた。なんとなく目が離せなかった。男はわたしの視線を気にしていた。男の体がこわばっていくのがわかる。わたしは男から視線を外したいのに