Shin Yamagata

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4月7日
薄い雲がやってきて、しっかりと出ていた影がぼんやりとかすんだ。以前ここに来たときもこうなった。石組みの階段に今回も腰を下ろして雲がどこかへ行くのを待った。前は足下のアリをずっと見ていたのだけど、今はまだアリが出てくる季節にはちょっと早かった。石しか転がってないから顔を上げて向かいの山を見た。二羽のカワラヒワがキリキリと鳴きながら緑の羽をちらつかせて川の方へ下っていく。向かいの山からはウグイスの声が聞こえていた。ヒヨドリの声も聞こえている。小説を読んでいると春はヒバリがよく出てくる。最近の小説には出て来ないのかもしれない。だけど、ヒバリの姿も鳴き声も知らなかった。知らないから今聞こえている鳥の鳴き声の中にもしかしたらヒバリの鳴き声が混ざっているのかもしれない。そもそもなぜヒバリを知らないのだろうかと思うのだけど、子供のときのまわりにいた大人たちが誰もヒバリを話題にしなかったし、だから、ヒバリは山の中にいない鳥なのかもしれないし、とにかくヒバリのことは何も知らないし、縁もなかった。それで改めてヒバリについて