Shin Yamagata

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4月3日
下の畑で動くものがあった。人間にしてはのろまな動きだけど人間ぽい。ゆっくり移動したと思ったら顔を上げてこちらを見た。オランウータンに似たおばあさんだった。じっとこちらを見て目をそらさないからぺこっと頭を下げるとおばあさんも頭を下げた。突き出したのか下げたのかよくわからない首の動かし方も人間ぽくはない。雲が多くて晴れ間が出なくて三脚を立てたまま陽が射すのを待っていた。10分くらい掛けておばあさんがゆっくりとこちらに上ってくる間も太陽は出なかった。コロナウイルスが蔓延している間はできるだけ年寄りとは話さないようにしていたけど、もういいかと思って話した、というかおばあさんが話してきたから聞いた。この季節は桜も桜以外も色々咲いているからカメラを持っているだけで、あっちにもっといいところがあるとか、あそこには行ったか、とか花を撮っていると勝手に思われて色々向こうから教えてくれる。おばあさんは自分の家の庭から撮った方が見渡せていいと、上にある自分の家を指さした。ありがとうございます、と言って、そこから移動するわけでもないからおばあさんもじっと目の前に立っている。それから太陽が出ないから色々話した。おばあさんは本宮の神社のそばで生まれたらしく、そのことをことあるごとに話した。繰り返すたびにおばあさんの頭の中には子供の頃の風景が広がっているのだと思って、へーとはじめて聞いたように何度も頷いていたのだけど、10回も超えはじめると、