Shin Yamagata

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11月6日
ニコンがやっている中高生向けのフォトコンテストがある(https://www.nikon-image.com/activity/topeye/192/index.html)。審査員は藤岡亜弥と熊切大輔だ。全ての写真ではないが、こういう写真はどこかで見たことがある。これらの写真は、大人のモノマネでしかないのではないか。アサヒカメラや日本カメラの誌上コンテストと何が違うのか、それらのジュニア版でも目指しているのか。これらの写真を撮った中高生は悪くない。こういう写真が評価されると思わせている大人がつまらない。これらの写真を選んでいるこの二人の審査員がつまらない。

中でも気になったのが、2Lなど小さなサイズの写真が多かったことです。小さなサイズでたくさん出すより、A4サイズで細部に気を配って1枚作り上げる方が作品の質も上がり、写真を考える力もつきます。また、確かな技術がありアイデアが秀逸な作品も、タイトルが甘かったりコメントに力が入っていないと「どうかな?」と思ってしまいます。自分の写真を、言葉を使って考えることもとても重要です。

これは藤岡亜弥のコメントだ。もっともらしいことが書いてある。しかし、である。サイズを大きくして細部に気を配る、とあるが、それがなぜ大事なのか。その発想が、もう大人のくだらない発想なのではないか。中学生や高校生には気になるものにまずカメラを向けてもらいたい。われわれ大人たちが決して目を向けないだろうものにカメラを向けるはずだ。そのことがまず尊いのではないか。細部に気を配って向上させる「質」は、いったい何に貢献するというのか。その「質」は、誰に向けての質なのか。写真の力はそんなことで身についたりはしない。そんなことはあとからいくらでもつけられる力であって、今、彼ら彼女らが持っている関心や興味の方がよほど写真(写真だけに限らない)の力に結びつく。そして、サイズを大きくするとお金がかかる。中学生や高校生が自由に使えるお金は限られている。裕福な家庭の生徒もいれば、そうではない生徒もいる。大きなプリントをしたくてもできない生徒もいる。身の丈にあったプリントをしろ、どこかの国のクソみたいな大臣が言うことと、これでは同じではないか。小さなプリントがダメだというのなら、応募規約にA4サイズのみと書けばいい。2Lを外せばいい。現実的なお金の問題を無視したコメントにはがっかりとさせられる。もちろん、そんなつもりで言っていないだろうとは思う。しかし、不用意な発言には違いないし、言葉が足りていない。そして、そんなことよりも、もっと他に優先させるべきことはいくらでもあるのではないか。現在の大人の二軍を育てるような「指導」をしたいと藤岡亜弥は思っているのか。これでは受験勉強と変わりがない。
後半のコメントも気になる。言葉で色々考えた上でシャッターを押す大人が増えている中で、言葉ではない何かを駆動力としてシャッターを押す中高生の写真を、もっと楽しもうという姿勢をどうして持つことができないのか。言葉を使わなくても考えることはできる。歩く、カメラを向ける、シャッターを押す、その行為そのものがすでに考えるということだ。言葉だけが考えるための道具ではない。大人によって与えられた不用意でずさんな言葉が彼ら彼女らの中に入り込むことによって、彼ら彼女らの中にあった何かをまったく別のものに変えてしまう可能性がある。つまらない方向へだ。この審査結果が、その方向を指し示しているのではないか。言葉では簡単に嘘をつくことができる。誰かが言った言葉をオウムのようにそのまま吐き出せることができる。そんな言葉に信頼を寄せるよりもまず、何にカメラを向けているのかを見なくてはならないのではないか。なぜカメラを持って歩くのか。自身はそんなことも忘れてしまったのか。なぜ、中高生に、今の、こんな、クソみたいな大人の枠を当てはめようとするのか。とても悲しい出来事だ。(審査員が二人いるのになぜ藤岡亜弥だけに触れているかといえば、藤岡亜弥に期待していたからだ)


TopEyeフォトコンテスト
https://www.nikon-image.com/activity/topeye/